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リーダー的ブログ(*´∀`*)

世紀末リーダー伝たけし!の萌えを吐き出す場所です。 苦手な人は窓を閉じてお帰りください。
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はいはいやってまいりました。

愛しの愛しの杉山京介君の誕生日に何もしなかったにも関わらず、
その京介君を辱めるような悲しませるような弄ぶような、そんな妄想を繰り返す極悪人は私です。

今日もそれらの妄想の吐き捨て場を探し求め、ここに行きついたのでございます。
はい、ツイッターもやってますが、あの子はどうしても長文を連ねるには向いておりませんので。
さぁ、行きますよ!いつもあらすじは似たようなもんですが、私が飽きるまで同じようなあらすじですが、

サイズでかい上にあまり宜しくない絵が飛び出すので、続きは気をつけて下さいね!☆

拍手[9回]

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魅惑の肌触り

トニーにとっては、そう変わらない、いつも通りの休日だった。
マミーが自分の部屋に遊びに来て、ボンチューも途中から呼んで、食事を一緒に取った後、マミーだけ酒を飲みながら皆でだらだら話しこむ。
話しこむと言っても、話題の提供はいつもマミーで、トニーやボンチューから話出す事は滅多にない。
マミーの話は多種多様で、喧嘩のことだったり、自分の興味のことだったり、ファミリーのことだったり。
とりあえず自分が話したい事を好き勝手に話しているようだった。
トニーはもともと無口で聞き役に回る方であるし、ボンチューは飽きてきたらテレビを見るか、その場に転がって寝てしまうかだった。
そんなボンチューにマミーがちょっかいを掛けて、心地よいまどろみを邪魔されたボンチューが軽く手を出し、それが大きな喧嘩に発展する前にトニーが止めに入り、二人を風呂に向かわせた後、寝具の準備をしてやる。

酒が回り始めているせいか、その日もマミーは饒舌であった。
ボンチューもその辺に転がりだしているし、そろそろ風呂も沸くからちょうどいいかな、とトニーはマミーの話を聞きながら頭の片隅で思った。
今のマミーの話題はファッションについてである。
正直に言って、トニーはファッションについてそんなに詳しく知りはしないし、こだわるほど興味もない。
だが、自分を慕ってくれている可愛い子は、それを自分なりに楽しんでいることを知っていたので、よく分からない単語が連呼されても聞き流さずに頭に入れていく。
今日はマミーに無理矢理に近い形で飲みにつき合ってやっているので、意識していないと内容をとんと理解できない。

「んでよ~、男でも最近レギンス履いてたりすんじゃん?」

「?うん?」

「でもそれを上手く履きこなせてる奴なんてなかなかいねーし、そうゆうの見てっと俺イライラしてくるんだよな~」

「そーなのか。」

とりあえず頷いておこうと返事をしたが、マミーがチロリと視線を向けてトニーを軽く睨む。
喉を鳴らしながら呑んだ缶ビールをカツン、とテーブルに置き、口を開いた。

「おめ、レギンス知ってる?分かってて返事してるか?」

「…してない。」

「やっぱりな~、これだよ、これ!」

そう言うとマミーは胡坐をかいていた己の脚を伸ばして、ドカッとトニーの脇腹に当ててきた。
別にどうでもいいんだけどな、と思いながらも、トニーはマミーの脚を掴んで横にずらす。
そのレギンスとやらは、サラリというかツルリというか、何とも形容しがたい手触りで、己が生きてきた中で、この生地を使った服を身にまとったことはないな、と思い返す。

「どうだ、俺の履きこなし。」

マミーはふふん、と自信ありげに鼻で笑う。
トニーは先ほど『知ったかぶるな。』と言われたも同然だったので、今度は正直に感想を述べる。

「よくわからないな。」

「ここは褒めるところだろ~、お前も空気読めないっていうか天然っていうか~」

カカカッと笑い始めたマミーだったが、トニーの掌はそのレギンスに触れたままだ。
何だか、手に吸いつくというか離し難い質感に、つい掌を上下に動かしてしまう。
マミーもそれに気付き、しかしそれを制することもなく、ぐびりと酒をあおる。

「あにすんだ、むっつりスケベ。」

「いや…マミーの脚に興味はないんだけど…肌触りというか触り心地が新鮮で…。」

「お前何気に俺の脚を侮辱したな。」

「この掌が滑るような感覚が面白くてね。」

そう言うとトニーはまた掌を動かした。
マミーは『ふぅん?』と分からないと言わんばかりの気の抜けた返事をした後、トニーの脇腹を再び蹴った。
今度はさっきよりも力が入っていて、トニーは『あいた。』と言葉ばかりの声を上げた。

「そんなに滑らかな脚触りたきゃぁ、女でもひっかけろ。あいつらならレギンスなりタイツなりストッキングなり履いてんだろ。」

「タイツ?ストッキング?」

「冬場に女が履いてたりすんだろ、ストッキングはOLとか常に履いてるし。タイツはそれほどすべすべじゃねーかもしれねぇけど。」

「そのストッキングっていうのは?」

「年上のおねーさんに実地で教えてもらえ。」

お前マニアックそうだから、ハマって抜け出せなくなるかもな。とニヤ~と悪そうに笑ったマミーの顔を見て、そんなにいいものなのだろうか、とトニーの胸に僅かながらの興味と好奇心が湧いた。
だが、自分を相手にする女性など思い付きもしなかったので、その感触を知ることはないだろうな、とも思った。
ボンチューが本格的に寝ようとしている。
マミーもそれに気付いて、ボ~ン~チュ~と唸りながら、頬を高速で人さし指でつついている。
風呂が沸いたと音楽とアナウンスが聞こえてきたと思ったら、ボコという鈍い音も聞こえた。
マミーがギャァギャァ喚きだすのを止めながら、トニーは先ほど伸ばされた脚とその手触りを思い出していた。


**************************************

裏に続きます!
トニーが大胆かつ変態気味です。←
久々の更新でトニーをそんな風にするなんて!(;´д`)
私のせいです、ごめんねトニーw

拍手[10回]

共同生活

京介は一人暮らしのトニーのマンションに転がり込んでいる。


というのも、京介の高校は京介の家から通うには少々遠い場所にあった。
寮に入ろうかと迷っていたが、頑張って入った高校はトニーも通っていた
全国的に見ても名門のところだったため、寮には厳しい時間制限と自主学習という地獄が待っていた。
それを知るや、もちろん京介は寮には入りたがらず、かといって家から通うのも骨が折れる、とポツリと
トニーに零したところ、トニーから高校の三年間、トニーの部屋に住むことを提案された。
トニーの部屋から高校までは、目と鼻の先であり、最初はこの美味しい話に京介も飛びつこうとしたが、
家事、生活費、その他もろもろの事を考えると、嫌でもトニーに迷惑をかけてしまう。
ならば、いくら大変そうだからといえども、やはり寮に入った方がいいだろうという結論に至り、
京介はトニーの申し出を申し訳なく思いつつも断った。
そして始まった寮生活は何事も無く過ぎていった。
しかしある日、随分と疲れていた京介は、合同学習室での自主勉強もおざなりに、自分の部屋に戻り、
風呂は明日の朝入ろうと倒れ込むようにベッドに入った途端、いきなり身体の自由を奪われた。
何と鍵をかけていたにも関わらず、どうやって入ったのか、面識さえない男子生徒に
身体を抱きしめられていた。
いや、抱きしめられるというよりは締め上げられる感じで、力には自信のある京介に無謀にも覆いかぶさってきたのだ。
状況を理解できていない京介と、息の荒い相手。
思わずここで無意識に、リーダー的パンチやキックが出てしまったのはやむを得ないだろう。
もちろんこのことは問題になり話題になり、京介の肩身はすっかり狭くなってしまった。
同じ高校に通うリーダーズの耳に入れば、その口からマミーファミリー周辺にも広まる。
すると当然、トニーの耳にも入ることになった。
その後は、トニーの独断で京介はトニー宅に居候することに決まった。


そんな経緯で始まった共同生活は、京介にとっては戸惑いの連続だった。
今まで生まれ育った環境からいきなり違うところで生活するのだから、当然と言えば当然なのだろうが、
トニーはひたすら京介に甘く、優しかった。
家事をしなくても怒らないし、一日中コロコロ居間で転がってても何も言わない。
掃除をしている時のみ、『京介、掃除機かけるよ。』と大きくなったはずの京介の身体を
何も変わらないと言わんばかりに、軽く抱っこしてソファーに移動させる。
トニーだって大学があるし、バイトもしている。
日々の生活が決して楽なものであるとは言い難かった。
勿論京介にばかり構っている時間などないはずであった。
しかしトニーは、出来るだけ京介の居心地のいいように、部屋に住まわせてやっていたのである。
京介は自分だけがこの快適空間を提供されることに気が引けて、トニーの居ぬ間に洗濯ものをたたんだり、
洗いものを片づけたり、帰りにスーパーによってタイムサービスのものを買ってきたりした。
トニーはそれらをしてやるととても喜ぶし、買ってきたもので美味しいご飯を作ってくれる。
京介はトニーの笑った顔が好きだった。
目の前にはいつもトニーがいる、話を聞いてくれる。
その環境の変化は、京介の胸の奥にあるホワホワした感情を呼び起こした。
幼い頃はこの感情の名前を知らず、ただトニーを神様のように崇めていた。
今だってトニーを尊敬する気持ちは変わらないが、その感情を含めるとどうも昔とは感覚が違う。
きっとその感情は昔にも存在していた、でも、京介自身が気がつかなかった、分からなかったのである。
身体が十分に大人になってきた京介に、その感情は生々しい現実を見せた。

トニーに酷く丁寧に愛される夢を見てしまった朝だった。
目を覚ました京介の体中からは汗が噴き出して、心臓がドクドクとうるさく動いた。
荒れた息を整えようと、京介は胸や額に掌を這わせ、ゆっくり擦る。
両腿を擦り合わせた時、ぐちゅり、といった水音が鳴った。
もちろん、夜着は汗でどこかしらしっとりしている。
しかし、こんなにも濡れた音を出す程じゃない。
更に心拍数は上がり、恐る恐る京介は下半身を見る。
そこには切なく濡れた自分のものと、その滴るような欲望の液汁を吸った下着があった。
途端、京介の世界は弾けて崩れた。
目の前に広がるのは、新しい世界だった。
トニーに恋をしてしまったという、認めざるを得ない事実は、京介の世界をはっきりとした鮮やかなものに変えた。

後に、この下着と夜着をトニーの洗濯物と一緒に洗うには、罪悪感を感じてしまって、
『トニー、先に洗濯して。俺のは後でする。』と言ってしまったのが不味かったのか、
『いつもは一緒に洗ってるじゃないか。貸して。』と後ろ手に持っていたそれらを取り上げられた。
羞恥で真っ赤になり、涙目で喚く京介を見て、トニーも察し、察したくせに、丁寧にそれらをもみ洗いされ、
洗うトニーの背中に京介がへばりついていたのは今となってはいい思い出である。


京介にとって、トニーと過ごす時間は幸せそのものだった。
トニーがバイトに行っている時は、学校の課題をしていればあっという間に時間は過ぎるし、
それでも時間が余れば、家事なりゲームなりで時間を埋めていれば、トニーが帰って来てくれる。
何よりトニーはよく頭を撫でてくれた。
もう十分大きくなった京介なのに、トニーにはまだ出逢ったばかりの姿で京介が見えているようだった。
京介はうすうすそんな事も感じていたが、トニーに傍にいてもらえるだけ、触れてもらえるだけで安らいだ。
京介も口では『やめろよ。』と言いながら、ソファーに座るトニーの傍に寄って行って、
肩や腕に額を擦りつけるのは京介の癖だった。
要するに、京介もトニーにすっかり甘えていたのだ。
それに、トニーも京介が望む以上で応えていた。
トニーの身体は温かく、自分の胸の中も熱くなる。
これが恋というものか、と京介は毎日ごとにそれが成長していくのを感じ取り、
ひたすらにその感情がトニーにばれないように、と祈った。
この幸福の空間は時間制限のあるものだ。
その制限内、ずっとお互いに心地よく過ごしたかった。
そう願いつつも、京介はトニーの本心が見透かせるほど聡明ではなかったし、
先ほども言ったように、自分が満たされているだけではないのかと、ふと気になれば
その考えはずっと頭の中をついてまわった。

トニーはとにかくもてる。
それこそトニーに憧れている女性は、トニーが把握していようがしていまいが、
両手では足りないだろうというほどに。
トニーだって立派な男に成長したわけであるし、それこそ身体の関係などにも興味があるはずである。
女とは魅惑的な生き物で、加護欲をこれでもかと刺激し誘うものだと、周りを見て
京介は学んでいたので、そんなものがトニーの周りをうろちょろしてれば、リーダー的なトニーの事、
一人や二人、慈しむという名目でベッドに連れ込んでもおかしくないと思っていた。
しかし、トニーは京介が部屋に住むようになったからか、女どころかマミー達さえ連れてこない。
京介はそれが気になっていた。
もちろん、トニーが女を連れて帰ってきて『京介、今日はソファーで寝てくれるか?』なんて言おうものなら、
悲しくって目を真っ赤にして夜を明かしてしまうだろう。
だが、自分に気を使って女を作らない、というのはもっと嫌だった。
トニーの人生の障害になってしまうのだけは。

「トニーは、彼女とか、連れてこねぇの?」

京介は意を決して、キッチンで洗いものをしているトニーに訊ねた。
ザーザーと水音が混ざる中で、トニーは返事をする。

「え?どうしたんだ、突然?」

「ううん、トニー、バイトとか家事とか色々忙しいのに…何て言うか、上手く言えないけど」

「うん。」

「彼女とかっていうさ、一般的に癒しになる存在っていうか、人っていうか、…うん。
トニーもてるんだしさ、そんな、候補が居ない訳じゃないんだろ?」

京介の言葉を聞きながら、トニーは沈黙した。
皿が水を弾く音と、排水溝に流れていく水の音が混ざり合って、京介の耳に届いていた。
トニーの顔は、何故か見れなかった。
暫くすると、蛇口をひねる音がして、水の流れる音は徐々に小さくなり、消えた。
トニーが上に吊るしてあるタオルを取ったのが気配で分かった。

「……そんな人いないし…、癒されようって思うほど、俺は普段、疲れを感じていないよ。」

「嘘だ、家庭教師、面倒だろ?大学だって、たまに大変そうなレポート出てる。
家事にしたって、殆どトニーがしてくれて…これは俺が手伝えばいいだけの話なんだけど…」

「人に何かを教えるって意外と面白いよ。レポートだってコツコツしてればキツイものじゃないし。
家事は、し慣れていない京介がするより、慣れてる俺がする方が効率いいじゃないか。」

ハハハ、と笑うトニーに、京介はプクリと頬をふくらました。
何だか、いつものトニーのペースに持っていかれている気がする。
自分が聞きたいのは、トニーの本心なのだ。
これはきっと、まだトニーの本心ではない。

「なぁ、茶化さないでくれよ。俺、結構本気で聞いてるんだぜ。
トニー、俺がいることとか気にしないで、女にしろ友達にしろ、どんどん連れてこいよ。
ここは、トニーの部屋なんだぜ。先に連絡してくれてれば、俺は友達の家に行くなり何なり出来るんだし。」

京介のすわるソファーの傍まで歩いてきたトニーと、やっと視線を合わせた。
その時、京介は少々心臓をドキリとさせた。
甘い恋のときめきではない、冷や汗をかく時の、あの心地悪いものだ。
京介を見下ろすトニーの瞳は、言葉にし難いもので、しかし、京介の身体はピクリとも動かなかった。
そんな京介の状態を知ってか知らずか、トニーはそっとソファーのひじ掛けに腰をおろし、
固まったままの京介の頭を撫でた。

「…ここは、俺と京介の部屋、だろう?」

トニーの美しい微笑みと発せられた言葉に、京介はすぐに頷けないでいると、
トニーは更に言葉を続けた。

「…そうだね、気が、引けるかも。他人に土足でこの部屋に入られるのは…。
せっかくの、快適な空間なのに。やっと…ここまで整えたのに…。」

「……平気だ、よ?靴、玄関で脱ぐだろ?部屋だって、散らかすなって言っておけば…」

「…そういう意味じゃない。そういう意味じゃないんだよ、京介。」

頭を撫でていたトニーの手は、するりと京介の頬に降りてきた。
そっと優しく、形を確かめるように上下する掌に、京介は身体の強張りを解されていくようだった。
心地よさに、うっすら瞳を細めると、トニーは再び唇に弧を描いた。

「京介が友達を呼びたいのなら呼んでいいよ。でも、俺は呼ばない。」

「どうして?」

「理由はさっき言っただろう?でも、そんなの俺の勝手な了見だから。京介がそれに付き合う必要はないよ。
京介は京介がしたいように、ここで過ごしてくれて構わない。だってここは、京介の部屋でもあるんだから。」

トニーはまるで言い聞かすようにそう言った。
それは京介になのか、自分自身になのか分からなかったが、トニーがあからさまではないにしろ、
本心を零してくれたことはわかったので、京介はそれ以上深く聞き出そうとは思わなかった。
もともと居候の身であるし、トニーへことわりもなしに、他人をこの部屋に呼ぶなどという
失礼極まりないことはしようとも、出来るとも思っていなかったため、その点は問題なさそうだな、と
京介は一つ小さなため息をついた。
トニーはそれを聞き漏らさず、今度はトニーが京介に詰め寄った。

「そのため息は何?」

トニーの目は爛々としているように見えた。
再び身体が凍りついて、京介はトニーを見つめたまま動けなくなる。
怖かったのだろうか。
認めたくはないが、どこかしらに、トニーに対して恐怖を抱いていたのかもしれない。
こんなに、好きなトニーなのに。

トニーの顔と腕はどんどん京介に近づいてきて、京介を広い両腕の間に囲い込むと、
そのままソファーに倒れ込んだ。
京介を下にするのではなく、倒れ込む間に器用にも京介を腹に乗せる体勢になって
力いっぱい京介を抱っこしていた。
息苦しくて、京介はもそもそとトニーの胸の上で身じろぎをする。

「トニー…?」

「……お仕置き。」

京介はトニーの言っていることがわからなかった。
自分が、お仕置きをされるようなことをしたとも言ったとも思えなかったし、
それにこれはお仕置きではない、ご褒美に近い。
褒められて、抱っこされて、可愛がられているようにも思えるのに。

「どうして?」

「…どうしてだろうね。」

抱きしめる腕はどんどん強くなる。
苦しくなっていくのに、京介はそれに応えるように、後ろからトニーの肩に腕をまわした。
トニーの心臓の音が聞こえる。
強くて、それでいて、速いような気がしないでもない。
自分は逆に、随分と落ち着き払っている。
こんなに、大好きなトニーに抱き締められているのに。

「トニー、怒ってる?」

「怒ってないよ。」

「本当?」

「うん…。」

京介は小さく『よかった。』と言った。
トニーが膝を立てて、京介の身体を完全に自分の間に入れてしまう。
絡まる長い脚が、何だかくすぐったくて、京介は笑った。
生足の自分と、ジーンズをはいているトニー。
明るい照明、綺麗なフローリング、柔らかい絨毯、心地よいソファー。
トニーはせっかく整えたのに、と言った。
その空間に、自分が一部として含まれているといい、と京介は願った。
しかし、それが叶ったところで、自分のトニーに対する気持ちを吐露してしまえば、
トニーが望んだ空間はこなごなに砕け散ってしまうことは目に見えていた。

(あんたは、知らなくていい。)

京介にとって、全身でトニーを感じている今以上に、幸せな時間はないのだと。

(あんたは、知らなくていいよ。)

伏せた瞼の下、その瞳に込められた熱を、京介は今日も隠し続けている。



おしまい!

*************************************************************************
テーマが決まらなくて、でも何となく文章が書きたい気分で、こんなものになってしまいました。
トニーサイドも書いてみたいなぁ。

そして、地震の被害にあわれた方様方、ご無事でしょうか。
私は九州という西日本に住んでいる人間なので、ニュースをつけ
東日本の状況を知り、呆然としてしまいました。

何か出来ることはないか、何か元気づけられることはないか、
ずっと考えていて、でも直接的な貢献はこんなに離れていてはできなくて、
こういうときに自分の無力さを痛感するもので、ただただずっとニュースにかじりつく日々でした。

私にできることは、現地の早期復興を祈ることと、募金ぐらいしか思いつかなくて、
(献血も考えましたが、年2回の縛りで、私は8月にならないと出来なかったです。)
できることはできるだけやろうと、大企業や有名人のようには出せませんが、
街の募金箱にお金をちょこちょこ入れていっております。
早くこの募金が有効に使われることを望んでおります。
こんな些細なことしかできなくて本当にすみません。
どうか、被災者の方々が御無事で、心の傷が早くに癒えますように願っております。


拍手[8回]

傷とぬくもり

京介にはある願望があって、それは決して現実ではなし得ないことだった。


己の中にある正義に真っ直ぐで忠実な京介だが、その正義の根底には憧れというものがひっそりと存在している。
理想の君は京介より三つ年上の人で、老若男女万人に優しく接する。
京介は照れくさくて、他人にそんな風には出来ないが、その慈愛に満ちた瞳を見ていると、胸の奥がキュウと締まり、熱く火照りだすのをいつも感じていた。
素晴らしい人、素敵な人。
憧れは尊敬と共に、新しく恋という感情を生み、京介を悶えさせた。
普段はキリリと凛々しく美しい顔は、微笑むと柔らかく穏やかなものになる。
温かく低い声で名前を呼ばれれば、目の前は一瞬くらりと歪み、甘い眩暈を起こさせた。
京介はそれを抑えるために、一度ゆっくりと目を閉じる。
再び瞳を開けば、もうその人しか見えない。

想い人の名前は、トニーといった。

その人の身体には幾つもの傷があり、それは大きく深いものから小さく細かいものまで様々だった。
京介が幼い頃に、その人の理想と傷を見せてもらったときは、とにかく凄い、かっこいいといったキラキラした感情が先走ったが、いくらか物事を深く考えることができるようになってから、(つまり、歳を重ねて成長してから)その人がその傷と共に、深く重い出来事も背負っていることに気がついた。

しかし、その人は決して辛さを口に出さない。

和田町に行っていた時、京介とその人は全く違う道を歩いていた。
京介は憧れに突き動かされるままに、その人が通っていたリーダー保育園に入園して、その人は暗い絶望と悪意が渦巻く恐ろしくも醜い町で生きていた。
尊敬できる仲間が出来て、京介の日々は光の中で輝いていた。
一方トニーは自分の理想と願望を貫き通せない厳しい現実と無力さに打ちひしがれて、自分を見失っていた。
トニーのうずくまりながら歯を食いしばって必死に生きた四年間の苦しみは、到底京介にはわからない。
トニーは和田町での出来事を欠片も京介には話さなかったし、その頃をうかがわせる行動や表情は、マミーファミリーにいたこと以外ほとんどなかった。
トニーは京介に自分の弱い部分を決して見せない。
だが、トニーの身体には確実に傷が増えていて、それを見てしまった時、京介はトニーにしがみついてワンワン泣きたい気持ちになった。

なんでだよ。
なんであんたがそんなボロボロにならなきゃいけないんだよ。

のどまで出かかった言葉と滲んだ涙に、京介は押しつぶされそうになった。
トニーの傷は消えない。
しかし、せめてその傷と共に抱えている苦痛ぐらい、分けて欲しかった。
トニーがそれを望んでいなくても、京介はトニーの為ならいくらでも耐えられる自信があった。
それ程、トニーを愛していた。


京介の願望が夢になって現れ始めたのは最近である。
夢は真っ白なふわふわした空間で、自分が丸くなって眠っているところから始まる。
身体を包む肌触りのいい白い布は、それでも安定せずにゆっくり波打つ。
瞼を持ちあげると、少し遠くに愛しい人がいる。
京介はそっと起き上って、その人へ向かって駆けていく。
トニーも白い布を身体に纏って、傍にきた京介に微笑む。
京介はその微笑みに心地よく酔いながら、ゆるりとした手つきでトニーの身体に触れた。
頬と頬を擦りつけあり、腕はトニーの背中にそっと回す。
トニーの高い鼻筋に己のそれを合わせる安心感、首筋にも、肩にも額や頬を擦りつけた。
トニーは何も言わず、京介の好きなようにさせてくれた。
京介の目に映るのは、トニーの傷。
当然のように、京介はそれにそっと口付けた。
数えきれない傷一つ一つに、丁寧に唇を重ねていく。

好き。
好き。
トニー。

胸の中はトニーへの想いで溢れていた。
トニーがかつて囚われ、足枷の跡をくっきりのこした暗い過去を。
輝く自信を燃え尽きた灰のようにしてしまった絶望を。
瞳を閉じ、耳を塞いで全てを拒みたくなるほどの苦痛を。
少しでいいから、分けて欲しかった。
自分に、さらけ出してほしかった。

愛してくれなんて、贅沢は言わない。
だって、相手は万人に愛されるリーダーなのだから。
絶望から救ってくれた、大切な人がいるのだから。
でもわがままが許されるなら、自分に縋ってほしい。
気を紛らわす道具でいい。

全てを理解して、包んであげられるだけの腕も懐のでかさもなかった。
何も知らなかったくせに、貴方にたくさん酷いこと言った。
そんなガキで不器用でバカな俺だけど
貴方を見つめ続けた時間だけは、誰にも負けないはずだから。


貴方の傷に、キスをしたい。
一つ一つに、丁寧に。



「京介、寝ちゃったのか?」

久し振りにトニーの部屋に泊まりに来ていた京介は、風呂上がりの暖かさとテレビのちょうど良い雑音に、ソファーの上で意識を飛ばしかけていた。
深い眠りについておらずとも、穏やかな規則正しい呼吸が、横たわる京介が夢うつつの中にいることを告げる。
まだ洗いものを片づけている最中だったトニーも、京介が湯冷めしてしまわないか少し心配で、蛇口をひねって流れ出る水を止めた。
大きな足音も立てず、京介の近くに歩み寄る。

「京介。」

優しい声で名前を呼んだ。
京介はピクリと一度身体を跳ねさせ、ぅう、と小さく唸って身をよじる。
やっと中学に上がったとはいえ、眠る顔にはまだ幼さが残っている。
トニーは口元に弧を描くと、そっと京介の髪を手櫛で梳いた。
青色の髪は柔らかく、じわりと人の温かさを伝えてくる。

「京介、寝るならベッドに行こうな。」

トニーはそっと京介の両脇に手を差し入れた。
そのまま京介の上体を起こして、抱き上げてベッドへ運ぶつもりだったのだろうが、京介はうっすらと目を開いてしまった。
心地よい眠りを邪魔してしまったと、トニーは少し眉を下げたが、京介の意識は覚醒しきっていなかったようで、小さめの口をもにもに動かして目をうっすら開けたり閉じたりを繰り返している。
トニーは、この様子ならベッドに運んで宥めてやれば再び眠りにつくだろうとホッと安堵の息をはく。
しかし次の瞬間には、腕に感じた温かく柔らかい感触に、ビクリと身体をこわばらせた。

「!」

洗いものをしていたから袖をまくっていた。
長袖を愛用しているトニーの、普段はさらされない腕に、その傷に。
京介は慈しむように口づけている。
トニーが驚きのあまり硬直していると、京介の唇は次の傷に移っていく。
その様子があまりに扇情的で、トニーは落ち着いて状況を把握できるようになると同時にひどく焦った。
深かった傷の跡を、京介がチュゥと強めに吸った時、はじかれたように京介から手を離した。

ドサリと京介の背中がソファーの腕置き部分にもたれる。
しまった、とトニーは京介を見ると、先ほどとは打って変わり、はっきりと目を見開いていた。
何が起こったのかよくわかっていない様子の京介に、どう説明すべきなのか。
口づけられた腕をもう片方の手のひらで押さえて、自分が何故こんなにも動揺しているのか。
何か、何か言葉を紡がなくては、とトニーは背中に汗をかいた。
いつも平常心を失わない自分がこんなに取り乱していては、京介も混乱してしまう。
だが、あぁ、上手く言葉が出てこない。
普段無口な自分を、こんなところで叱咤したくなるなんて。

「京」

「…ごめん、間違えた。」

名前を呼びきる前に京介に言われた言葉。
それはあまりに鋭利で、トニーの戸惑いと熱い想いが渦巻いていた胸を、無情にも突いた。
トニーは、自分は今、先ほどの京介と同じ表情をしてしまっているのではないだろうか、と思った。

間違えた。

それは、いったい誰と?

普段、京介にあんなに優しく口づけられる相手は誰なのだろう。
人に優しくすることを、照れくさがってなかなかできない京介が、あんなに自然に唇を寄せる。
心の底から、慈しみたいというように。
そんな京介の気持ちを、想いを、一身に受けるのは誰?

黙ったままのトニーに、京介は再び『ごめん。』と言った。
その声が耳に届き、やっと理解した時、トニーは小さく声を漏らした。

「あ…いや、いいよ。京介は…寝ぼけてたんだもんな…。」

はは、と誤魔化すように笑ったが、それは余りに乾いていて、その場の重たい空気は変わらなかった。
無言の空間、うつむいた京介の表情には、何か苦いものを飲み下したような影があった。
胸が痛んで仕方ないのは自分の方なのに、何故、京介がそんな表情をするのか、トニーにはわからなかった。
わかりたくなかった。

「ごめん、今日、やっぱり帰る。」

「え…?」

「泊まるの、やめる。」

沈黙を破った京介がソファーから立ちあがって、トニーの横をすり抜けようとした。
トニーは床に膝をついたままだったが、少し慌てて京介の腕を掴んだ。

「帰るって、もう外は夜で真っ暗だし、風呂にも入って、夜着じゃないか。」

「…上着、着るから平気。街灯もあるから。」

「でも、危ないだろう。それに外はとても寒いんだぞ。」

こんなに食い下がるなんてみっともないだろうか。
いや、言っていることはこちらのほうが正論だし、今日は京介を帰したくなかった。
帰してはいけないと、自分の中で警鐘がなっていた。
帰してしまえば、誰かの腕に、京介をとられてしまう気がしていた。

奪われたくない。

京介はトニーの唯一の聖域であり、心の支えだった。
えんチョーやマミーとは次元が違う、大切な人だった。
だから、京介に口づけられた時、驚きと焦りの中から、溢れんばかりの歓喜を感じた。
愛しさでどうにかなってしまいそうだった。
抱きつぶしてしまいたくなるほど。
なのに。

「…な?京介…。今日は我慢して泊まっていってくれないか。」

トニーの言葉に、京介はすぐには頷かなかった。
しかし、トニーも根気よく京介の首が縦に振られるのを待ち、切なく締まる気持ちを押さえて京介を見つめ続けた。
すると京介は、トニーの様子を窺うように、ちらり、ちらりとトニーの表情を見ては俯くを繰り返した後、口を開いた。

「…邪魔じゃない?」

小さな声だった。
トニーは眉を下げ、にっこり微笑んで京介の頭を撫でた。

「何言ってるんだ。当たり前じゃないか。」



京介はトニーのベッドに横たわって、布団にくるまった。
トニーの表情を思い出して、瞳を瞑る。
しまった、と思った。
自分はまだ夢の中にいるものだと思っていた。
トニーにあんなに優しく名前を呼ばれていたから。
普段見れない傷が視界に入ったから。

「…間違え、ちまった。」

もう取り返しがつかない。
あの人に、あんな顔をさせてしまって。
もちろん自分もその表情をみて、酷く傷ついた。
悲しかった。

やはり、この気持ちはトニーにとってはうっとうしいものなのだろう。
もう決して、この気持ちを表に出すようなことをしてはならない。
静かに、消化されるのを待とう。
いつか、忘れられるだろうか。

「…無理だろうな。」

そしてきっと、再びあの夢を見ることもなくなる。
あの人のあんな表情を見た後で、あの願望を願い続けられるほど、自分は強くなかった。



夢を見た。
あの夢のように、真っ白で柔らかくて暖かいとろこに寝そべっている。
心地よくて、ずっとこうしていたくて。
いつものように、目は覚めなかった。
だが、さらに優しく温かく自分を包む何かを感じていた。
程良く縛られる身体は向きを変えて、縛るそれに縋るように頬ずりした。
それは更に優しく強く身体を締め付ける。
その戒めさえ、気持ちよかった。

これが、トニーの腕だったらよかったのに。

そう思って、でもそれがあり得ないことを思い出して、京介は一筋涙を流した。
優しいそれは、その雫さえ優しく受け止め、自分をあやす様に額を撫で、頬に触れた。
このぬくもりを、手放したくなかった。

耳元で自分を呼ぶあの人の切ない声を聞いた。
でも、きっとそれも夢だったのだろう。
あの人は、こんな風に自分を呼ぶわけないのだから。


おしまい!

************************************

今年は、ってーか今は切ないトニ京で頭の中がいっぱいだ…!!
コメントありがとうございます!また別の記事で返信させて頂きますー(*´∀`*)vvv


拍手[5回]

悴む

トニーとマミーは仲が良い。
それはもうずっと前から分かっていたことだ。
トニーがファミリーに入っていたことは、まぎれもない事実だし、
マミーが優秀なトニーを気に入って、常に傍においていたことも知っている。

京介はその過去を憎らしく思いつつ、しかし心の底からそう思いきれずに、
それどころか僅かながらも、胸をなでおろすような安堵感や
マミーに対して、欠片も似合わない感謝というものを感じていた。
微小な切なさを含むそのトニーへの想いに、京介なりに結論は出していて、
目標は変わらずとも、以前のように深入りしてはいけない気がして、
胸の内は静かに熱を失っていった。

それを曖昧ながらに感じていた京介は、良好だとそっと胸に手を当てる。
現に目の前のマミーのしぐさや声を見聞きしても、変に頭に血が上らない。
以前なら、言葉にしがたい黒くてドロリとした感情がマミーに向いたままどうしようもなくて、
腹の中はぐっと押し下げられたように熱く苦しく、しかし頭はいやに冴えていた。
そして何かにつけてはイチャモンをつけ合い、口論に発展することが多かった。
今となっては、マミー自身への興味が湧いているぐらいで、素の状態からマミーという人間を
感じることができるようになっていた。
幸い馬場もボンチューもこの場にいるし、自らが口を開かずとも場の空気は保たれる。
(自分が発言したからと言って、場が盛り上がるわけでもないのだが)
京介は外からの情報を、素直に受け入れていくだけだった。
ファミレスの温かい空調とライトと、それに合わせて小さく流れる落ち着いた音楽。
湯気の上るカップの中をカチャカチャとかき回す本人と、その話の内容。

新しいデニムを買ったこと。
ついでにボタンにコートを見立ててやったこと。
ファーがたっぷり付いたものを勧めると、ボタンが泣きだしたこと。

ある日、喧嘩をふっかけてきた奴らをぼこぼこにしたこと。
逃げようとした奴はひっ捕まえて、完膚なきまでに叩きのめしたこと。
その時の機嫌の悪さはボンチューに負けたことが原因だったこと。

時折赤い髪をかき上げる姿は、とても大人びて見えた。
トニーとはまた違う、妖しい雰囲気を醸し出す。
ぼんやりと眺めていると、マミーの周りだけに揺らめく強いオーラが見える気がして、
理性と正義の塊だったようなトニーを絡め取ったものがそれだったのだと、いやでも分かった。
マミーとの視線が絡まれば、それを自ら解くのは不可能で、引き込まれてしまうような錯覚さえ感じる。
つくづく不思議な男なのだと。
こんな男だったからこそ、トニーはついていったのだと。

(…駄目だ。)

トニーは自分の目標であって、他人との比較をするための基準ではない。
ましてや、その相手とトニーのことを関連付けて考える必要はどこにもない。

トニーにとらわれたままの自分を感じて、京介は厳しく己を咤した。
瞳を閉じて、じっ下を向く京介にマミーは露骨に顔をしかめた。
自分が目をそらす前に京介にアイコンタクトを遮断されたのが気に食わなかったようで、
小さなテーブルをわざとらしくカツンと手入れの行き届いた爪で叩いた。

「そういえば、この間トニーがよー…」

京介の顔が上がる。
それがマミーを満たしたのか、ニッと口元は弧を描いた。
京介はトニーの中に完璧と理想の文字を見ている。
そんな京介に、トニーの天然なところを、更に面白おかしくふざけて伝えるとどうなるのだろう。
それは、いたずらに顔を出した好奇心からだった。

「…が…で…本当にトニーって馬鹿だよな~」

その一言に京介の片眉が不愉快そうに上がる。

「…そーいう言い方やめろ。好きじゃねぇ。」

「お?久々に口を開いたかと思ったらそんなこと言うか?空気読めよ。」

「…空気とかあってないようなもんだろ。」

何かを必死で抑えるように京介は額に手を当てた。
小さめの口から零れるのは随分ゆっくりとしたため息で、再びマミーの中で白けたような感情が湧き上がる。
京介の、何かを覆い隠すような態度に鈍い不満を覚える。
真正面からぶつかってこない輩は、マミーにとって徹底的に潰したくなる対象だった。
この時の京介だって例外ではなく、京介が被っているベールを引っぺがすのに躍起になっていた。
京介を突き動かすものは、トニーだということぐらい承知している。
トニーの名を連呼し、執拗にその相手との話をすれば、京介が食ってかかって来ると思っていた。
それをかわして掌の上で弄ぶのもいいし、応戦して遊んでやるのもいいと思っていた。

馬場やボンチューが二人を宥めに入ろうとする頃、京介は一発マミーの頬を叩いた。

乾いた音が空間に響く。
マミーの頬にはジワリとした痛みと熱が集中してきていた。
しかし、マミーはそれを歯牙にもかけず、目を丸くして京介を見た。

怒気を発してキュッと唇を噛む京介の、
それでも少しつつけば泣きだしてしまいそうな瞳に目が離せなかった。

「…やっぱりお前、嫌いだ…っ。」

絞り出すように京介は言った。
マミーをぶった掌はギュッと固く拳を作って震えていた。
そして京介はすばやくその場を立つと、一言『帰る。』と呟いて早足に出入口に向かった。
その時、タイミングよく、話題のリーダーが現れた。
京介は声をかけようとした笑顔のトニーに一瞥をくれて、その横をするりと通り過ぎた。

「京介?」

背中で聞いた、不思議そうなトニーの声が京介の頭の中に残る。
事情を聞いたトニーが追いかけて来るまでに、そう時間はかからなかった。





掴まれた手に鈍い痺れが走る。
冷えた手足を、いきなり湯船の中に突っ込んだような、じわりとしたそれに京介は眉間にしわを寄せた。
振り向けば、頭一個分上の視線に射抜かれて、冷えた風を突っ切っていた足は止まっていた。

「…んだよ、何こっち来てんだよ。」

「京介。」

「あそこに来たってことは、マミーに呼ばれてたんだろ?
なのに、何俺にかまってんだよ。そんなんだから、マミーにからかわれるんだぜ。」

言葉と一緒に吐き出した息は一瞬で凍って白くなり、冷たいあたりに溶けた。
自分で発した言葉なのに、こんなに胸を突き刺すのは何故だろう。
トニーは深くマミーと関わっていて、自分とはもうすっかり希薄になってしまっていることを
自分で認めているからだろうか。
しかし、それは京介自身が進んでそうなろうとしたことであって、
それに傷ついているなど矛盾もいいところだ。
幼稚な自分に嫌気がさす。
そうだ、自分はこんなにも幼い。
到底、トニーの隣で笑っていられる相手ではないのだ。

落ち着いてきていたはずのトニーへの想いが、ここで再び息を吹き返す。
じわじわと熱をもってきて、京介の胸をくすぐった。
吐き出せるはずもないのに、何と無駄な感情なのかと、京介は絶望さえ感じた。
ここで涙をこぼすのは浅ましくも醜い、京介はトニーの手を振り払おうと軽く上から下に動かした。
しかし、己の手首に絡みついたトニーの手ははがれない。
がっちりと、まるで離さないと言っているかのようなそれに、京介は大きく心臓を鳴らした。

「…トニー」

思えば、この時トニーの目を見てはいけなかったのだ。

「京介がいると言われたから…」

「え?」

「京介がいると言われたから、エプロンを取って、コートを着て、あそこに向かった。
……京介と、その…暫く、ゆっくり話す機会がなかったから……」

戸惑ったような、言うことをためらうような口調の割に、トニーの瞳は強かった。
京介は鼻の奥から目頭にかけて走る熱に、ぐっと唇を噛んで堪えた。

(どうしてこの人は、俺の欲しい言葉をくれるんだろう。)

ずるい人だ。
全く、本当に、ずるくて、やはり、愛しい人なのだ。

離れていこうとする自分の手を掴んで離さない上に、
それは自分の本心ではないはずだと無意識で説き伏せる。

視界がじわじわ滲んできて、それを我慢していると子供っぽい鼻から抜けた声が出た。
むーむー小さく唸る京介の頬を温かい掌で包んで、トニーは顔を近づける。

「ほら…こんなに冷えてしまって…。皆の所に戻ろうか?」

京介は何も答えなかった。
バンダナ越しにコツンとトニーの額があたり、冷えて感覚の無くなった京介の鼻に
己の高いそれをゆっくりと優しく擦りつける。
その間、トニーは京介の瞳から眼を逸らさなかった。
じっと見つめていた。

「…京介、寒いんだろう?鼻も頬も、冷たいよ。」

今京介には、トニーしか見えていない。
ならばと京介は、トニーの手の甲に悴んで赤くなった己の手を遠慮がちに重ねた。
力を込めていけば、つられてトニーの掌から与えられる圧力も熱も増えていく。
こんなに近くにいる。

それだけで幸せだった。

何度か京介が瞬きをしたら、そこからポトリと雫がこぼれた。
トニーはそれをそっと拭って、自分の口元に持っていった。

「大丈夫だよ。マミーももう怒っていないからね。」

随分的外れな事をいうトニーに、京介は小さく笑ってみせた。

期待をして、裏切られた時の恐ろしさは、考えただけで目がくらみそうになる。
それでも、自分はこの人に囚われたまま、逃げ出せずにもがくのだろう。
甘い痺れをもたらすトニーの掌の熱を感じながら、本望だ、と京介は思った。



おしまい!

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まとまらなかったトニ→←京文章。
お手手とあんよがちべたいよぅ。(;´д`)

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でも京介受けなら何でもいけます。←
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